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「六芒星またはダビデの星」 (以下六芒星)と呼ばれる双晶形態がミャンマーのモゴック地方から産出していることは従来から知られている.ただ、この結晶形については言及されておらず、スピネル式双晶の変型した結晶と考えられていたようである.詳細に検討したところ基本的に回転対称を伴う接触双晶と考えられ、本来の平行接触であるスピネル式双晶や鏡面接触双晶である小谷式三連晶とは異なる双晶形式と判断できた.
さらに六芒星と呼ばれる結晶形態には、双晶・三連晶の二通りが存在している.双晶は二つの結晶が組み合わさったいわゆる双晶であるが、もう一つは三連晶の上下の結晶が 60 °回転しかつ透過して六芒星の形態に見えるものである.
結晶形態を理解しやすいように、立方晶系の軸率 a=b:c=1:1 の軸比を八面体の重心位置である a=b:c=1:{2 ×(√ 6)/6},β=120 ゚を用いて擬三方晶系に変換した.上端面を c 面と仮定した場合、スピネル式双晶の内どちらか 1 つが60 °回転して接していることが明瞭に判った.この形態は 60 °回転接触双晶に区分さ れる.接触面が o{111}面であることから 60 °回転スピネル式双晶とも言える.また、平行接触形式がスピネル式双晶と呼ばれていたが、その形態から回転接触双晶でもあることも考えられた.しかし、スピネル式の平行三連晶は確認できず、鏡面接触式である小谷式三連晶が確認された.
六芒星の双晶・三連晶の二通りの双晶形態は、擬三方晶系の形態を示し、対称心を有することから従来の平行接触によるスピネル式双晶及び三連晶や鏡面接触三連晶とは異なる双晶形態であると考えられる.
そのため、これらの形態の名称として、対称心を有するすなわち回転を伴う o 面接触双晶及び三連晶、または簡単にモゴック式双晶及び三連晶と提案する.