真珠は有機物からなる宝石であり、使用を重ねる中で経年変化や劣化が進んでしまうことがある。真珠にみられる劣化は、溶解、変色・褪色、加工キズ、稜柱層起因による劣化、われなどが主に知られている。これらの劣化は酸やアルカリ、温度や湿度の変化、光(紫外線)などが主な要因として報告されている。例えば劣化現象の中で一番多くみられる溶解は、真珠表面が経年変化によって白濁してしまう現象である。これは汗や化粧品などに含まれる酸やアルカリが要因として報告されている。着用時に付着したこれらが真珠表面の炭酸カルシウムを溶かしてしまい、表面の平坦な部分に微細な凹凸が形成される。そこに光が当たるとこれまで規則的に反射していた光が散乱してしまうことによって白濁して見える。また、変色・褪色は真珠に熱や紫外線が加えられることによって真珠層内のタンパク質を変性させることで引き起こされると言われている。このように様々な外的要因が真珠の主成分である炭酸カルシウムやタンパク質に影響を与えることで真珠の劣化は引き起こされてしまう。
今回は劣化の中でも酸・アルカリや温度によって引き起こされる劣化に対する物性の変化やそのメカニズムについて調べた。更に、これらの劣化による炭酸カルシウムやタンパク質への影響について機器分析を行った。
試料はアコヤ真珠を用いた。酸・アルカリによる劣化については人工汗液(酸性:pH5.5、アルカリ: pH8.0)に真珠を浸漬させた。温度による劣化については沸騰した水道水(約 95℃)に浸漬した。各々の方法で劣化させた真珠について、従来の目視・蛍光・表面拡大観察に加えて、機器分析として紫外可視分光法、蛍光分光法、ビッカース硬度測定を行った。