日本歯科理工学会学術講演会要旨集
平成21年度秋期第54回日本歯科理工学会学術講演会
セッションID: OS-1
会議情報

「歯科材料・器械の評価基準を考える」 -ISO規格の要点-
ISO/TC106の変遷と現状
*小倉 英夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
10月にISO/TC106総会が大阪で開催される.この会議が日本で開催されるのは今回で3回目となる.ISO/TC106は,歯科材料・器械・用語の国際規格作成を目的として1967年に発足した.日本は1973年からこの委員会に参加するようになったが,この頃のISO規格は各国の国内規格を作成するための基礎資料として用いられることが多かった.当時は,日本からの参加者も少なく,会議出席の主目的は規格原案,会議資料あるいは技術情報などの収集であった.他国の参加者についてもほぼ同様の状況で,現在の国際競争的な状況とは大きく異なっていた.筆者は1987年の会議から参加するようになったが,その当時も同様の状態であった.このような状況は,国際社会の変化とともに大きく変貌してきた.ISOに大きな影響を与えた国際社会の変化として,EUの統一規格とWTO(世界貿易機構)のISO規格採用を挙げることができる.1991年,EUは域内の統一規格としてISO 規格を採用することにした.これを契機としてEUへの輸出品はISO規格に合格することが要求されるようになった.また,1995年にWTOは「加盟国はそれぞれの国家規格 (日本ではJISなど)をISOなどの国際規格に原則として合わせる」ことで合意し,自由貿易の基準としてISO規格が用いられることとなった.これらの変化によって,ISO規格の作成作業は大きく活性化されたばかりでなく,規格作成における各国間の競争が始まったということができる.現在,ISO/TC106では加盟国の積極的な活動によって多くの規格作成作業が進められている.規格原案は提案国が主導して作成されるので,いずれの加盟国も規格作成の新規提案には非常に熱心である.日本も例外ではなく,歯科用インプラント,歯ブラシ,義歯床安定剤,デンタルフロス,磁性アタッチメントなどについて新規提案を行い,日本主導のもとに規格作成作業が進められている.加盟国間には人種や気候風土に違いがある.また,製品自体にも違いがある.日本に適したISO規格制定のために ISO日本代表団のさらなる活躍を期待する.
著者関連情報
© 2009 日本歯科理工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top