日本歯科理工学会学術講演会要旨集
平成21年度秋期第54回日本歯科理工学会学術講演会
選択された号の論文の182件中1~50を表示しています
特別講演
  • 原口 泉
    セッションID: SL-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    小松帯刀は大河ドラマ「篤姫」の準主役,薩摩藩を束ねた城代家老.坂本龍馬は来年の大河ドラマ「龍馬伝」の主役,土佐藩の脱藩浪士.二人は同じ天保6(1835)年生まれで,薩長同盟と大政奉還の立役者である.今から150年前の1859年,日本は開港し,いきなり世界市場に投げ出された.政治的混迷と国内経済危機,まさに「内憂外患」の危機であった.二人はいかにして同志として結ばれ,日本の危機を救ったのか? 龍馬と帯刀をめぐる女性たち~お竜と大浦お慶,お近とお琴~との関係を横軸にしながら,幕末維新の大河の流れを描きます. 内容は, _丸1_ 南北戦争がなければ,明治維新は無かった _丸2_ 島津斉彬の工業化と対外貿易対策 _丸3_ 小松帯刀が龍馬に託した世界進出 _丸4_ 大久保利通と岩崎弥太郎による海運興業 などです. 参考文献は拙著『世界危機をチャンスに変えた幕末維新の知恵』2009年7月,PHP新書(780円)です.幕末の志士たちは「世界経済」と闘っていたのです.今こそ,危機をチャンスに変えた幕末,明治の国家建設に学ぶべき時です.
公開シンポジウムおよびDental Materials Adviser/Senior Adviser特別セミナー I
「歯科材料・器械の評価基準を考える」 -ISO規格の要点-
  • 小倉 英夫
    セッションID: OS-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    10月にISO/TC106総会が大阪で開催される.この会議が日本で開催されるのは今回で3回目となる.ISO/TC106は,歯科材料・器械・用語の国際規格作成を目的として1967年に発足した.日本は1973年からこの委員会に参加するようになったが,この頃のISO規格は各国の国内規格を作成するための基礎資料として用いられることが多かった.当時は,日本からの参加者も少なく,会議出席の主目的は規格原案,会議資料あるいは技術情報などの収集であった.他国の参加者についてもほぼ同様の状況で,現在の国際競争的な状況とは大きく異なっていた.筆者は1987年の会議から参加するようになったが,その当時も同様の状態であった.このような状況は,国際社会の変化とともに大きく変貌してきた.ISOに大きな影響を与えた国際社会の変化として,EUの統一規格とWTO(世界貿易機構)のISO規格採用を挙げることができる.1991年,EUは域内の統一規格としてISO 規格を採用することにした.これを契機としてEUへの輸出品はISO規格に合格することが要求されるようになった.また,1995年にWTOは「加盟国はそれぞれの国家規格 (日本ではJISなど)をISOなどの国際規格に原則として合わせる」ことで合意し,自由貿易の基準としてISO規格が用いられることとなった.これらの変化によって,ISO規格の作成作業は大きく活性化されたばかりでなく,規格作成における各国間の競争が始まったということができる.現在,ISO/TC106では加盟国の積極的な活動によって多くの規格作成作業が進められている.規格原案は提案国が主導して作成されるので,いずれの加盟国も規格作成の新規提案には非常に熱心である.日本も例外ではなく,歯科用インプラント,歯ブラシ,義歯床安定剤,デンタルフロス,磁性アタッチメントなどについて新規提案を行い,日本主導のもとに規格作成作業が進められている.加盟国間には人種や気候風土に違いがある.また,製品自体にも違いがある.日本に適したISO規格制定のために ISO日本代表団のさらなる活躍を期待する.
  • 小田 豊
    セッションID: OS-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    歯科用合金関連の規格は歯科専門委員会(TC106)の下の7つの分科委員会(SC)の中で補綴材料委員会(SC2)が担当し,これまでに金合金規格作業グループ(WG)や非貴金属合金規格作業グループの様に規格毎の作業グループを設置して審議されてきた.しかし,1998年頃より欧州標準化委員会(CEN)を中心として統合化の機運が高まり,材料別に定められた従来の規格から用途別の規格に再編成が行われている.金属関係の規格もほぼこの作業が終了して,新たな金属材料の規格が定められ,固定式及び可撤式修復物・装置用金属材料(ISO 22674:2006)が発行された.この規格の発行によってこれまで規格化されていた鋳造用金合金(ISO 1562:2004),歯科鋳造用非貴金属合金-第1部:コバルト系合金(ISO 6871-1:1994),歯科鋳造用非貴金属合金-第2部:ニッケル系合金(ISO 6871-2:1994),貴金属含有量25%以上75%未満の歯科鋳造用合金(ISO 8891:1998),金属-セラミック歯科修復システム(ISO 9693:1999),歯科-固定式歯科修復物用卑金属材料(ISO 16744:2003)の6規格が廃止されることになり,規格の内容も大幅な変更がなされた.また金属材料関連規格として,歯科-水銀及び歯科アマルガム用合金(ISO 24234:2004,SC1で作成),歯科用ろう付材料(ISO 9333:2006),矯正用ワイヤー(ISO 15841:2006),腐食試験方法(ISO10271:2001)が定められている.これまでタイプ別金合金の4タイプが歯科用合金の分類の基準とされてきたが,新たに6タイプに分類されたこと,組成で「カドミウム,ベリリウムは0.02%以上含んではいけない」,「0.1%以上のニッケルを含む場合は含有量を明示する」など毒性・為害性からの要求事項が重視されていること,耐食性については,全ての金属材料で200 μg/cm2・7day以下の溶出量とされたこと,などが特徴的である.
  • 高橋 英和
    セッションID: OS-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    コンポジットレジンは修復材料委員会(SC1)の作業委員会であるSC1WG9で審議され,第3版であるISO 4049:2000を改定すべく,最終原案の投票が行われたところである.主な変更点は,日本からの提案で接着性を有するとするレジンセメントがこの規格から除外されることを明記したことである.要求値には大きな変更はないが,エックス線不透過性についてはユニバーサル色で測定し,他の色調の値が2倍以上異なる場合はその色調でも測定することとなっている.なお,エックス線の不透過性については新たな規格の制定がSC1WG10で試みられている.セラミックス材料は補綴材料委員会(SC2)の作業委員会であるSC2WG1で審議され,ISO 6872の第3版として2008年に制定された.この改正では粉末陶材の使用目的でClass分類がされていたものが,各種陶材を臨床使用目的によってClass分類されている.また,曲げ強さの評価方法として4点曲げ試験が加えられ,付属書に破壊靱性の測定方法とワイブル分析の解説が加えられている.現在,昨年問題となった陶材の成分について,その分析方法と要求値の検討が開始している.また金属陶材焼付けを規定しているISO 9693:1999に陶材同士の焼付強さの評価方法も加えるべく,検討されている.義歯床用レジンはSC2WG11で審議されている.ISO 1567:1999に代わってISO 20795-1が義歯床用レジン材料として2008年に制定された.この改定ではレジン材料を義歯床用材料の第1部と矯正用材料の第2部に分け,異なる要求値を設けたことである.義歯床用レジンには衝撃に強いとされる製品があるが,2003年制定の修正表ではCharpy衝撃試験で評価していた.今回の規格では予亀裂を導入した試験片で3点曲げ試験より破壊靱性値と仕事量を求めている.現在作業中の矯正用レジンにおいても破壊靱性値が要求値として求められている.これは床矯正装置を使用するのは多くが小児であり,使用中に破折すると問題があるとの考えに基づいている.
  • 河合 達志
    セッションID: OS-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    ISO TC106の中のSC8(第8小委員会)では歯科用インプラントシステムに関する国際規格の作成を行なっている.SC8はさらに5つの作業部会(WG1~WG5)と1つの暫定作業部会に分けられており,作業分担を行なっている.以下に作業部会名と議長名を記載する. WG 1: Implantable materials:議長 Dr J-P. Davidas, France WG 2: Preclinical biological evaluation and testing:議長 Prof Jack Lemons, USA WG 3: Content of technical files:議長 Dr Klaus Dermann, Germany WG 4: Mechanical testing:議長 Mr Floyd Larson, USA WG 5: Dental implants:議長 Terminology Mr James McLees, USA Ad hoc Working Group on CAD/CAM:議長 Prof Jack Lemons, USA 日本から精力的に提案を行なっている部会はWG2とWG4であり,WG2においては佐藤温重 先生,故長谷川二郎先生の長年のご尽力により 成立した臨床前動物使用試験の規格であるTS22911が今年度定期見直しのため討議される.また,WG4においては日本歯科大学新潟生命歯学部補綴学の渡邉文彦先生を中心にインプラントの捻り試験法の規格について討議がなされている.このような生物学的な内容のISO規格作成は,TC106/SC8のみならずTC106直下に設置されているTC106/WG10において歯科材料全般を対象にISO7405の討議が行なわれている.ISO7405は翻訳規格としてJIS規格となっており,日本国内における歯科材料生体安全性の規格としてきわめて重要な位置を占めている.したがって,その内容が日本の国情にとっても妥当性のある内容に制定されるよう注意深く検討する必要がある.シンポジウムではこれらの活動について,歴史的な経緯も含めお話をさせていただく予定である.
公開シンポジウムおよびDental Materials Adviser/Senior Adviser特別セミナー II
「ジルコニアを用いたメタルフリーレストレーションを考える」
  • 坂 清子
    セッションID: OS-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    近年,ジルコニアは審美補綴材料として臨床応用が急速に高まっている.その理由として, 1) 色調が審美材料として優れている. 2) アレルギー反応を生じないので,生体安全性に優れている. 3) 強度、耐久性に優れ,ブリッジの症例にも適用できる. 4) セラミック材料であり,金属材料のように価格が変動しない. などがあげられる. 一方,問題点として指摘されている点は, 1) ろう付けが出来ないので,ロングスパンブリッジでの適合が難しい. 2)臨床応用されてから月日が浅く,口腔内での耐久性や材料の長期安定性に不安がある. 3) ジルコニアと焼成する陶材との焼付け強度に対して不安がある. などがあげられる. 今回,演者は現在市販されているジルコニア材料の特性を述べると共に,臨床経過から今後ジルコニア材料に求められる課題について,報告したいと思う.
  • 蛯原 善則
    セッションID: OS-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    現在,歯科界において歯科用CAD/CAMシステムのニーズが一層強まっており,国内外でも多くのシステムが発売されている.工業界と歯科界のCAD/CAMシステムの利用はコンピュータ支援による設計・製造という点では同様であるが,歯科界では工業界に比べて応用されている背景が若干異なっている.工業界におけるCAD/CAMシステム導入の理由は同じ形状を短時間で大量に生産する量産効果が最大の目的であるが,歯科界においては製作物の形状が患者や症例ごとに異なり,完全なオーダーメイドとなるために工業界と同じ量産効果を求めることは難しい.しかしながら歯科用CAD/CAMシステムの研究,製品化は急速に進められおり,またシステムにより製作される修復物の適応範囲も日々拡大してきている.その理由としては,金属に代わる審美的材料を求める患者ニーズがある.なかでもセラミックスでありながら金属材料に代わる高強度かつ審美性に優れた材料として注目されているジルコニア材料は手作業による加工が困難であったが,歯科用CAD/CAMシステムを応用することにより,単一歯(コーピング)だけではなく多数歯が連結された修復物(コーピングブリッジ),インプラント上部構造まで広い範囲で応用が可能である.一方,近年コンピュータ技術の進展は目を見張るものがあり,我々はIT技術をベースに例えばインプラント治療の際もCT診断,デジタルX線診断,CAD/CAMシステムを用いたジルコニア補綴物製作などトータルソリューションをより進めたいと考えている.デジタル技術を歯科補綴物製作へ応用するための中核にはCAD/CAMシステムが位置しており,このCAD/CAM技術の応用は歯科技工の内容を大幅に変革する可能性を秘めたものである.このような背景を常に意識し,歯科用CAD/CAMシステムから見たジルコニアへの技術応用について紹介する.
  • 高橋 啓至, 寺前 充司
    セッションID: OS-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    歯科治療において患者からの審美的要求が高まる中,メーカーの技術革新によりその要求に応えるべく審美材料が開発されてきている.その中でも近年のCAD/CAM技術の急速な進歩により,「白いメタル」と呼ばれるジルコニアフレームを用いた審美補綴修復技法が,高審美・高強度の特性に加えて優れた生体安定性を有していることから,臨床での応用が拡大傾向にある.しかし,ジルコニア材を用いた修復技法を成功させるには,天然歯類似の色調再現や機能的な回復を実現するためのジルコニア用陶材及び歯質とジルコニア材を強固に接着することができるレジンセメントの存在が必要不可欠となる.弊社では,ジルコニアフレームを用いた審美 補綴修復技法に対応する材料として,天然象牙質,エナメル質の色調を忠実に再現し,また技工操作性,生体適合性にも配慮したジルコニアフレーム用上層陶材「ヴィンテージ ZR」を2006年に上市し,高強度セラミックス(アルミナ,ジルコニア)専用に設計された「AZプライマー」を備えた審美修復用レジンセメント「レジセム」を2007年に上市しております.本シンポジウムでは,これらジルコニア材対応製品の設計思想から製品特徴を解説致します.
  • 新谷 明喜
    セッションID: OS-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
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    歯科治療を望む患者さんは,生体材料用いた補綴修復装置に審美性と生体適合性に対する要求を増大させている.ルコニアセラミックス(以下ジルコニアと略す)は,優れた強度と靭性を有するバイオマテリアルである.歯科領域においては,オールセラミック修復をはじめとする審美補綴のフレーム材への臨床応用が行われている.そのジルコニアフレームは単冠から1-2歯欠損のブリッジまで製作が可能となり,メタルフレームと同等かそれ以上の機能と機械的性質を有する素材として脚光をあびている.最近のMI審美修復では,自己治癒可能なエナメル質は可及的に切削せず,切削したエナメル質や 象牙質は接着材で接着処理している.その結果,歯質の耐酸性を高めてリーケージによる二次ウ蝕の防止,セラミックスのマージン変色を防止することが可能となってきた.ジルコニアを審美修復として応用するには,レヤリングポーセレンや歯冠用ハイブリッド型レジンが,ジルコニアフレームに対して強固な接着を可能にするシステムとして確立できれば,補綴装置の信頼性,安全性の高い治療方法になる.そして,症例に応じて修復材料を使い分ければメタルフリークラウン・ブリッジの応用範囲が広がる.さらに,CAD/CAMによる技術開発は修復装置の高品質化,加工精度の規格化,製作工程の簡略化や技工環境の改善などが期待できる.ジルコニアの高い明度(白色)と屈折率により天然歯の色調再現が困難であったフレーム材が,着色材を用いて表面を着色することで精巧な色調が可能となり,前歯部に応用しても高い審美性が得られるようになった.このような新製品を臨床応用する場合,機械的性質の曲げ強さに加え破壊靭性値についても表記する必要がある.特にブリッジのフレームに使用するジルコニアでは重要な評価基準である.破壊靱性値を比較すると,Pencraftで3.11,Vitadurで1.9,Crysceraで2.78,IPS Empress 2で3.02,In-Ceram Aluminaで4.7,Cerconで9.5,NANOZRで19.2MPa・m1/2と最も大きな値を示した.これら材料と技術により,ジルコニアを用いたエステティックレストレーションによる一口腔の修復が可能になってきた.
口頭発表
ポスター発表
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