抄録
ポーセレン焼付け鋳造冠は, ポーセレンの持つ優れた生体親和性や審美性と, 金属材料特有の優れた靭性を活用した歯冠修復物であり, 歯科医療に重要な役割を果たしている。近年, パラジウムを含有しないポーセレン焼付け用高カラット金合金が開発され, 種々の製品が実用化されている。この合金は, 成分のほとんどが金と白金で占められ, その他にインジウムや鉄, 亜鉛などの非貴金属元素が少量添加されたものであるが, その色調は製品により微妙に異なっており, 少量の添加元素が合金の光学的性質に複合的な影響を及ぼしているものと考えられる。一般に, 歯科用金合金においては, その色調の制御は, 合金組成の設計上, 重要な要素の一つと考えられるが, 合金の化学組成と光学的性質の関係は詳細に検討されていない。そこで本研究では, パラジウム無添加ポーセレン焼付け用金合金の光学的性質に及ぼす各種添加元素の影響を明らかにすることを目的とした。すなわち, 母合金としてAu-10at.%Pt合金を作製し, この合金の光学的性質に及ぼすIn, Fe, Zn, Snの単独添加の影響と, 実用合金におけるIn含有量に近い2at.%Inと少量のFeまたはZnの複合添加の影響を分光測色計を用いて検討した。
本研究で用いた合金の価電子濃度(e/a値)と, 知覚色度指数a*値およびb*値の関係を検討すると, a*値はe/a値の影響をあまり受けないが, b*値はe/a値の増加とともに増加する傾向を示した。このことは, 合金の価電子濃度が増加すると, 色調が黄色みを帯びることを意味している。