肺癌
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症例
肺血栓塞栓症を契機に診断されたROS1融合遺伝子陽性肺腺癌の1例
宮平 由佳子角 俊行鈴木 敬仁越野 友太池田 拓海渡辺 裕樹山田 裕一千葉 弘文
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2024 年 64 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

背景.ROS1融合遺伝子陽性肺癌(以下,ROS1肺癌)は非小細胞肺癌の1~2%であり,希少な遺伝子変異である.ROS1肺癌は若年者,女性,非喫煙者に多く,病理学的に粘液を有する腺癌が多い.非小細胞肺癌は血栓塞栓症の発生率が増加するが,さらにROS1肺癌は血栓症リスクが上昇する.本症例は肺血栓塞栓症を契機にROS1肺癌と診断された.症例.46歳の男性が息切れと両下腿の疼痛のため受診した.造影CTで肺動脈および左大腿静脈に血栓と,右中葉に結節影と縦隔リンパ節腫脹を認めた.肺血栓塞栓症と診断し,直ちにヘパリン持続注射を開始した.縦隔リンパ節より生検し,右中葉肺腺癌cStage IVA,ROS1融合遺伝子陽性と診断した.ヘパリン持続注射からアピキサバンに変更し,クリゾチニブによる治療を開始した.3ヶ月後,血栓は消失し,原発巣およびリンパ節の縮小を認めた.血栓の消失および腫瘍の縮小は12ヶ月以上継続している.結論.血栓症イベントを有する若年肺癌患者は,希少遺伝子変異の可能性を考慮し,迅速な精査および抗凝固療法を行うことが重要である.

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© 2024 日本肺癌学会
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