抄録
喀痰検診5年間の成績を踏まえて, より効率的な早期肺扁平上皮癌の発見をめざした異型扁平上皮細胞判定基準と事後指導の方法を検討することを目的とした.延べ37015名の受診者のうち, 肺癌学会分類を基にして作成した筆者らの細胞判定基準による判定C (中等度異型) からの癌の発見はなかったが, 判定D (高度異型扁平上皮および癌疑い) では, 高度異型扁平上皮の精検受診者77名から4名 (5.2%), 癌疑いでは36名から10名 (27.8%) の癌が発見された. 従って, 判定Cでは次年度の喀痰検診による追跡で十分であると思われ, 判定Dでは, 癌が疑われると判定された場合には直ちに精検が必要だが, それよりも異型が弱く高度異型と判定された場合には直ちに喀痰細胞診を再検し, 細胞異型が同様に比較的弱ければ, 以後喀痰細胞診と胸部X線写真で追跡すればよいものと思われた.