抄録
らい菌のMicro-satellite多型であるTTC repeatの発見に端を発したハンセン病の分子疫学の進歩は、感染源、感染様式などハンセン病医学の基本的な問題について実証的な研究に道を開いた。そこから得られた科学的知見は、未治療の多菌型患者をほとんど唯一の感染源と考え、早期発見・早期治療と多剤併用療法の普及により公衆衛生問題としてのハンセン病を制圧しようとする現行の戦略に根元的な疑問を投げかけている。こうした現状におけるハンセン病専門家の責務は、それぞれの地域の分子疫学的データに基づいて実行可能なハンセン病対策を提案することである。