聴覚的言語理解について俯瞰した。聴覚的言語理解は,意味がコードされた音 (すなわち音声) の聴取にはじまり,音にコードされた意味の解読に至るプロセスである。認知神経心理学的観点からみると,(1) 自然界から脳内への音声の取り込み (音響処理) ,(2) 音声のカテゴリー化と音韻照合 (音韻処理) ,(3) 語彙/語義処理,(4) 構文解析,(5) 談話分析の 5 段階に分けて考えることが可能である。本稿では,それぞれの処理過程について,認知神経心理学的メカニズムおよび,脳内基盤について述べた。
また,認知神経心理学的観点から言語情報処理について考える際,音節言語である英語向けに考案されたロゴジェンモデルをそのまま日本語に適用すると,いくつかの「ずれ」が生じることを指摘するとともに,モーラ言語としての特性を考慮した日本語固有のロゴジェンモデルを提案した。