高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム IV : エビデンスのある認知症のリハビリテーション
エビデンスのある認知症の非薬物療法
三村 將
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2012 年 32 巻 3 号 p. 454-460

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抄録

   認知症に対する根治薬物療法が確立されていない現時点では, 認知症の治療戦略は非薬物療法が中心になる。認知症の発症予防, 進展予防に食事や運動の持つ役割は一定の効果が期待されているが, まだエビデンスとしては十分ではない。認知症患者への関わりに際しては, 個々に応じた患者本位の介護をこころがける。そのためには, 疾患ごとの特徴的な問題点に応じた解決策を図り, 患者ごとの背景要因に気を配る。介護者への関わりも大切である。介護者の対応が変わるだけで, 患者自身の問題行動が減り, 介護負担も軽減してくる。
   認知症に対する認知リハビリテーションは集団で行う場合と個人で行う場合に大きく分けられる。集団技法のうち, 有効性のエビデンスが高いのは現実見当識訓練とデイケアである。個人リハビリテーションは病初期の症例について, テーラーメイドに行われるが, コリン作動薬による薬物療法との併用で効果が示される可能性が高い。認知症に対する非薬物療法は基本的に患者本位のアプローチである。したがって, 効果を期待する領域を精神症状や行動面, 生活の質などに広げて考える必要がある。それとともに, エビデンスや勧告度合いのみを頼るのではなく, 個々の症例の丁寧な観察から生じた個別の臨床的関わりを大切にすべきであろう。

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© 2012 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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