高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
皮質基底核症候群により多様な書字障害を呈した 進行性非流暢性失語の1 例
田村 至濱田 晋輔中川 賀嗣森若 文雄田代 邦雄
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2014 年 34 巻 2 号 p. 242-251

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抄録

皮質基底核症候群(CBS)による進行性非流暢性失語症例における書字障害について検討した。症例は78 歳右利き女性,発話および書字障害で発症し,右手に優位な運動障害がみられたが,注意機能は保たれていた。書字障害の運動的側面として,失行性失書が認められ,左頭頂葉機能低下が考えられた。 また書字の空間的配置に異常がみられる空間性失書や漢字に字画の過剰・欠落を呈する求心性失書がみられたことから右頭頂葉機能低下が推測された。書字障害の言語的側面として,仮名の錯書より左前頭葉機能低下,仮名の脱字より両側前頭葉機能低下が考えられた。漢字では類音的錯書が認められ,左側頭葉の営む意味処理の障害が推測された。一方,写字は良好であった。CBS の病初期に出現した多様な失書症状は,優位な血流低下を呈した左半球機能低下とともに視空間機能,視覚性・運動覚性フィードバックを営む右半球機能障害が関与した可能性が示唆された。

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© 2014 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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