2017 年 37 巻 2 号 p. 166-173
非侵襲的脳刺激 (Non-invasive brain stimulation: NBS) は, 頭蓋骨を通して大脳を刺激するために電気的・磁気的な誘導電流を用いる手法で, うつ病・脳卒中など幅広い分野における新たな治療方法として注目を集めている。近年, 高次脳機能障害患者への応用に, その研究フィールドが拡大している。その応用には, (1) 高次脳機能障害を呈するさまざまな疾患, また多彩な症状に, 有効な刺激方法の確立, (2) 安全性・有効性の証明, (3) 患者の社会復帰・社会参加のために反復性経頭蓋磁気刺激療法 (Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: rTMS) と併用する有効な認知リハビリテーションの確立など, いくつかの課題がある。本稿においては, 我々の研究グループでの研究や, 過去の論文より rTMS を用いた手法に関する報告を中心とし, 高次脳機能障害への適応について論じる。