2017 年 37 巻 2 号 p. 174-180
機能的近赤外分光法 (fNIRS) は, 簡便性, 拘束性の低さなどの特徴からも, 多くの認知神経科学的研究が行われてきた。本稿では, その中でも発達認知神経科学の領域に着目し, 定型発達脳と自閉症スペクトラム障害 (ASD) という非定型発達脳について我々の fNIRS 研究をもとに述べる。最初に触覚という知覚処理の脳機能の違いを定型群と発達障害群で比較検討した研究からは, Aβ線維由来, CT 線維由来の機能の異なる触覚刺激の違いに関わらず ASD 群は前頭前野の反応が弱く, 心拍反応も弱いことが示された。ASD 群は社会的タッチと呼ばれるCT線維由来の触覚だけに違いがあるわけではない可能性が示された。続いて, ASD 児の発達支援前と支援後で fNIRS 計測し, 支援効果を客観的に評価する試みと現在得られている結果について紹介する。以上は, fNIRS が発達脳の基礎研究ばかりでなく臨床的にも充分応用できる可能性があることを示している。