高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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37 巻 , 2 号
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教育講演
  • 安保 雅博
    2017 年 37 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      脳卒中後遺症には, いろいろな障害を呈するが, 我々は, 反復性経頭蓋磁気刺激 (rTMS) と集中的リハビリテーションを世界で初めて治療として系統化して施行している。脳卒中後の上肢麻痺に対する低頻度 rTMS と集中的作業療法の併用療法を[NovEl Intervention Using Repetitive TMS and Intensive Occupational Therapy: NEURO(R)], 失語症や高次脳機能障害に対する rTMS と集中的リハビリテーションの併用療法を[NovEl Intervention Using Repetitive TMS and Intensive One-to-one Training: NEURO(R)]と命名している。脳卒中後上肢麻痺患者に対して安全に施行可能であり, 高い feasibility をもって麻痺側上肢運動機能を有意に改善させ, そのメカニズムについても多くの報告をしている。失語症の場合は, Functional MRI-Based Therapeutic rTMS Strategy が非常に重要で, 脳機能的画像 (fMRI) のデータと事前の失語症検査に基づいて磁気刺激施行部位を 4 ヵ所に振り分けて対応している。薬物療法や繰り返し磁気刺激法などを用い, 精度を高めている。

シンポジウム I : 高次脳機能研究のフロンティア―画像・整理手法の臨床応用―
  • 小林 俊輔, 鈴木 匡子
    2017 年 37 巻 2 号 p. 164-165
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー
  • 原 貴敏, 安保 雅博
    2017 年 37 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      非侵襲的脳刺激 (Non-invasive brain stimulation: NBS) は, 頭蓋骨を通して大脳を刺激するために電気的・磁気的な誘導電流を用いる手法で, うつ病・脳卒中など幅広い分野における新たな治療方法として注目を集めている。近年, 高次脳機能障害患者への応用に, その研究フィールドが拡大している。その応用には, (1) 高次脳機能障害を呈するさまざまな疾患, また多彩な症状に, 有効な刺激方法の確立, (2) 安全性・有効性の証明, (3) 患者の社会復帰・社会参加のために反復性経頭蓋磁気刺激療法 (Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: rTMS) と併用する有効な認知リハビリテーションの確立など, いくつかの課題がある。本稿においては, 我々の研究グループでの研究や, 過去の論文より rTMS を用いた手法に関する報告を中心とし, 高次脳機能障害への適応について論じる。

  • 皆川 泰代, 安井 愛可, 直井 望, 山本 淳一, 鈴木 健嗣
    2017 年 37 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      機能的近赤外分光法 (fNIRS) は, 簡便性, 拘束性の低さなどの特徴からも, 多くの認知神経科学的研究が行われてきた。本稿では, その中でも発達認知神経科学の領域に着目し, 定型発達脳と自閉症スペクトラム障害 (ASD) という非定型発達脳について我々の fNIRS 研究をもとに述べる。最初に触覚という知覚処理の脳機能の違いを定型群と発達障害群で比較検討した研究からは, Aβ線維由来, CT 線維由来の機能の異なる触覚刺激の違いに関わらず ASD 群は前頭前野の反応が弱く, 心拍反応も弱いことが示された。ASD 群は社会的タッチと呼ばれるCT線維由来の触覚だけに違いがあるわけではない可能性が示された。続いて, ASD 児の発達支援前と支援後で fNIRS 計測し, 支援効果を客観的に評価する試みと現在得られている結果について紹介する。以上は, fNIRS が発達脳の基礎研究ばかりでなく臨床的にも充分応用できる可能性があることを示している。

  • 小林 俊輔
    2017 年 37 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      brain-machine interface (BMI) は中枢神経の信号を解読して利用する, あるいは中枢神経の情報処理に外部から介入して操作する技術である。例えば四肢麻痺の患者の脳活動を記録して解析することにより車いすを運動の意図に基づいて操縦するといった臨床応用が考えられる。BMI には脳に外科的に電極を埋め込む侵襲的な方法や脳波などを利用する非侵襲的な方法がある。神経生理学研究の蓄積により神経活動を読み取り解析する技術は進んでいるが, 外部からの刺激により神経情報処理を修飾する技術に関しては未だ初歩的な段階である。将来的に読み取り・書き込み技術が発達すればコンピューターが生体脳の情報処理を補完することにより高次脳機能障害を治療することが実現されるであろう。

エクスパートに聞く 1
  • 葛原 茂樹
    2017 年 37 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      神経内科医としての約 45 年の間に経験した思い出深い認知症症例と, 認知症に関係した研究と発見, それらにまつわる話題をオムニバス風に紹介した。1970 年代に経験した Pick 病様の前頭側頭型認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 症例は, 現代の TDP proteinopathy の一型である frontotemporal dementia-ALS であった。1979~1981 年の米国留学中に見た kuru 斑を伴う Creutzfeld-Jakob 病 (CJD) とグアムの筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン・認知症複合 (ALS/PDC) の脳標本の知識が, 帰国後に役に立ち, 筑波大学では Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病, 三重大学では紀伊半島の PDC の日本初の症例を発見する契機になった。1983 年から7 年間勤務した東京都老人医療センターでは, レビー小体病の臨床特徴を明らかにし, アルツハイマー病と健常者の多数例を対象に老化脳のタウと Aβ の免疫組織化学的研究によって, その相違を明らかにした。また, レビー小体がユビキチン化されていることを初めて明らかにした。研究に協力してくれた多くの患者と共同研究者に深謝する。

エクスパートに聞く 2
エクスパートに聞く 3
  • 河内 十郎
    2017 年 37 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      Brodmann の 44 野と 45 野とからなるとされている Broca 野は, Broca が構音言語機能の座としたにもかかわらず, 今日では言語野とされており, Broca 野が実際に構音言語機能を持つのかどうかはまだ明らかではない。Wernicke 野 (上側頭回後部) も, Wernicke はことばの聴き取りを意味する言語の聴覚心像の座としたにもかかわらず, 言語理解の座として議論されることが多く, Wernicke 野の真の機能も明らかではない。ヒトの脳では長連合線維を確認する手段がないなかで Broca 野と Wernicke 野とを結ぶとされた弓状束は, 拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Imaging: DTI) の出現によって種々検討されているが, 起始部と終止部を決定できないなどの DTI の致命的な欠陥のために, 結果は混乱を呈している。

原著
  • 藤本 憲正, 中村 光, 涌谷 陽介, 津田 哲也, 京林 由季子
    2017 年 37 巻 2 号 p. 205-211
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      比喩文の理解課題を作成し, 軽度から中等度のアルツハイマー病者 20 名 (AD 群) に実施した。 課題は, なじみの低い直喩文30 題のそれぞれについて, その意味にもっともあう文を 4 つの選択肢から選ぶよう求めるものである (藤本ら 2016) 。その得点とトークンテスト (TT) の得点について, 健常高齢者 20 名 (高齢群) および失語症者 15 名 (失語群) と比較した。さらに, AD 群の比喩理解課題の得点と Mini-Mental State Examination (MMSE) , Frontal Assessment Battery (FAB) の得点との相関関係を分析した。その結果, AD群の比喩理解課題得点は高齢群より有意に低かったが失語群とは同等で, TT 得点は高齢群より有意に低く失語群よりは有意に高かった。AD 群の比喩理解課題の得点は, MMSE の総点と有意な相関関係を示し, 下位項目・領域別では MMSE の「注意と計算」領域と「書字」項目得点, FAB の「類似性」「語の流暢性」項目得点と関連した。アルツハイマー病の比喩理解障害の性質は失語とは異なり, 遂行機能および意味記憶の障害が関わる可能性が示唆された。

  • 村田 翔太郎, 若田 浩志, 大下 靖夫, 村川 孝次, 竹中 勝信, 今村 徹
    2017 年 37 巻 2 号 p. 212-219
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      左後頭葉内側面の損傷による純粋失読の一例において, 通常の読みでは読めない文字をなぞり読みした際に, 正しい形態と筆順で仮名 1 文字をなぞれた場合であっても, しばしばその文字を音読できないという現象が観察された。この現象を検証するために, 文字形態の視覚刺激, 書字する指先・筆先の動きを見るという運筆視覚刺激, 書字動作による運動覚入力である運筆運動覚刺激の 3 種の刺激を組み合わせた仮名 1 字の読み課題を作成し検討を行った。その結果, 運筆運動覚刺激のみであれば仮名 1 文字を正しく読むことができ, そこに運筆視覚刺激を加えても正しく読めるが, 文字形態の視覚刺激も同時に入力すると正しく読めないことが多かった。この結果から, 運動覚からの文字情報が, 同時に入力された文字形態の視覚情報に干渉されたために正常に機能せず読めなくなった可能性が考えられた。この仮説をもとに, 通常のなぞり読みに失敗した場合に, 直後に閉眼してなぞりを再現させるという, 文字を「見ないで」読む訓練を本例に実施したところ, 一定の効果が得られた。

  • 飯干 紀代子, 岸本 泰士郎, 江口 洋子, 加藤 佑佳, 松岡 照之, 成本 迅, 三村 將
    2017 年 37 巻 2 号 p. 220-227
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      テレビ会議システムを用いて遠隔で行う時計描画検査 (clock drawing test: CDT) の信頼性を, 対面検査との一致度, 加齢性難聴の影響, 利用満足度の観点から検証した。対象は, 健常高齢者 (NC) 38 例, 軽度認知障害者 (MCI) 15 例, アルツハイマー型認知症患者 (AD) 24 例, 計77 例 (女性39 例, 平均年齢75.6 ± 6.5 歳) であった。一人につきCDT を遠隔と対面の2 回, ランダムな順序で実施した。 全対象における遠隔と対面のCDT 得点の級内相関係数 (ICC) は0.83 以上, 疾患別でもNC が0.67 以上, MCI が0.59 以上, ADが0.84 以上であり, 十分な一致を認めた。施行順序別では, 遠隔・対面どちらを先に行ってもICC は0.81 以上であり結果に差はなかった。難聴が疑われる群においても, ICC は0.91 以上と一致度は高かった。遠隔検査に対する利用満足度調査では, 恐怖心や緊張感を多少なりとも感じる者が7 割いたが, 答えやすさについては, 対面と同等, あるいはそれ以上であった者が7 割を占め, 強い拒否感はないことが示された。

  • 浜田 智哉, 田中 果南, 今井 友城, 東山 雄一, 田中 章景
    2017 年 37 巻 2 号 p. 228-235
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2018/07/02
    ジャーナル フリー

      失語症臨床において保続を観察する機会は多いが, 保続は失語症評価訓練の阻害要因の 1 つとしても知られている。今回, 発症から 6 ヵ月経過し, 保続が主症状の 1 つであった失語症者に対して TAP (Treatment of Aphasic Perseveration) を参考に保続の減少を目的とした訓練を約 1 ヵ月間施行した。訓練手続きは TAP のエラーコントロールメソッドを取り入れ, さらに訓練中に表出された保続の種類の質的な分析を行うことで, 保続に対する TAP の作用機序を明らかにしようと試みた。結果として, TAP による保続の減少は訓練語以外へも汎化し, さらに実生活での言語表出能力をも向上させたことがわかった。 一方, 保続の質的分析の結果からは, TAP は主に直後型保続の減少に寄与していることが明らかとなった。

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