高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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セミナー II : 症例に学ぶ
進行性非流暢性失語に対する言語聴覚療法: 発語失行, 純粋語聾, 失音楽で発症した一例
佐藤 睦子新田 幸世小林 俊輔
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2018 年 38 巻 2 号 p. 204-210

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抄録

  症例は, 60 歳代, 男性。右利き。大学卒, 元会社員。元来歌唱能力は高く, また人前で話す機会も多かった。主訴は, 話せない, 聴き取れない, 音痴になった, 進行している。神経心理学的検査では, 聴覚的言語理解障害, 発語における音韻変化, プロソディ障害が認められる一方, 読み書き機能は保たれており, 発語失行と純粋語聾が同時に生じていると考えられた。また, 歌謡・楽曲の理解・表出・記憶も障害され, 失音楽も呈していた。MRI では両側シルビウス裂の開大, IMP-SPECT では左半球全体ならびに右頭頂葉の血流低下が認められたが, PiB-PET では βアミロイドの蓄積は認められなかった。本例では, 左半球の前方-後方言語野と右半球の前頭-側頭葉がともに機能低下を来したと考えられた。進行性疾患により発語失行と純粋語聾を呈した報告例はあるが, 失音楽を呈した例は稀である。本例の臨床症状について供覧し, 進行性疾患に対する言語聴覚療法について論じた。

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© 2018 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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