脳損傷者が自己の脳損傷について理解することは, アウェアネスや自尊心の向上につながるとされる。少人数の学習グループである脳損傷理解 ( understanding brain injury : UBI ) に参加した頭部外傷による高次脳機能障害の一症例の経過より, UBI を経験したことで意識や行動がどのように変化したかを検討した。結果, 症例の脳損傷に対する理解が進み, 認知障害に対する不安や孤立感が減少した。また, UBI がきっかけとなり, 易怒性を理解し, 場の雰囲気に配慮する言動が増えた。UBI の中で自己の障害を他者に開示し, 他者と共有し肯定される機会を持ったことで, 障害認識が向上し, リハビリテーションに対する動機付けを得られ, またグループへの帰属感が高まったと推察された。UBI は安心できる環境を保障し, 障害認識を高め, 社会復帰に向けた効果的なリハビリテーションを進める上で有用であると考えられた。