2021 年 41 巻 4 号 p. 397-405
本研究の目的は, アルツハイマー型認知症 (AD) における語想起過程の特性を, 語の意味的関連性によるクラスター形成の観点から検討し, 意味処理障害との関連性を明らかにすることである。対象は軽度 AD 群 15 名, 中等度 AD 群 19 名で, 対照群は健常高齢者 15 名であった。課題は意味カテゴリー流暢性課題を行い, 意味的関連性によるクラスター形成を分析した。結果, 軽度 AD 群はクラスター数のみ対照群より有意に低下したが, 中等度 AD 群はクラスター数とクラスターサイズが軽度 AD 群より有意に低下した。また中等度 AD 群でのみカテゴリー間で想起語数の差を認め, 語の意味処理能力を調べる意味類似性判断課題が低下した。
以上から, 軽度 AD は意味的クラスターによって語を想起する機能が低下するが, 中等度 AD はそれに加えて意味概念を共有する近接領域の語の想起も低下すると考えられた。AD の語想起障害の基底に意味処理障害が関与する可能性があると考えられた。