人間生活文化研究
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原著論文
知的障害児の発育期における運動能力について
早川 公康小林 寛道
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2014 年 2014 巻 24 号 p. 78-95

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抄録

知的障害児の身体的側面や体力・運動能力に関する調査・研究は部分的,限定的なものも含め,様々な報告が見受けられるが,わが国の文部科学省によって推進されている新体力テストを踏まえた測定および考察については,まだそれほどのデータや研究知見はほとんど見当たらない.今回は文部科学省の新体力テストを主な項目として定め,一般健常児と知的障害児の身体的側面および体力・運動能力を比較し,知的障害児の実態に迫ることで,知的能力への対応だけでなく身体的側面や体力・運動能力の向上に寄与することを目的として本研究を行った.東京大学生涯スポーツ健康科学研究センターにおいて身体的側面および体力・運動能力を評価するために各種測定を行った.被験者は知的障害児24名で,そのうち男子が20名(16.0±5.5歳),女子が4名(13.3±3.4歳)であった.身体的側面については,身長,体重,体脂肪率,筋量等を測定した.体力・運動能力の測定については,主に文部科学省・新体力テスト実施要項等に則り,握力,背筋力,長座体前屈,股関節開脚角度,10m歩行,10m障害物歩行等を実施した.一般健常児等の全国平均値と比較できる項目については,比較の上,検討を行った.男子において身長,体重,体脂肪率,筋肉量いずれも個人差が大きく,特に体脂肪率については10%を下回る人と60%に迫る人との差が顕著であるなど,発育の改善,適正な体組成維持のための各種要因について検討される必要があるものと考えられた.長座体前屈について,健常児の全国平均では年齢とともに向上するのに対して,今回の被験者の場合,向上していく人と低下していく人の両極端なケースがあり,個人差を大きくする生活要因が存在する可能性も推察された.背筋力について,男子においては同年齢(13歳)で85kgの差がある被験者2名が存在したが,その原因については筋量,筋-神経系,認知機能の状態等が関係しているものと考えられる.10m歩行については,歩行それ自体は生活の基本動作でもあるため,著しく能力の低い人にとっては日常生活に支障を感じている機会が多いことが推察される.10m障害物歩行能力については男女ともに全被験者が一般高齢者の全国平均よりも低く,50m走能力についても男女ともに全被験者が健常児の全国平均よりも低いことが示された.背筋力,握力および10m歩行,10m障害物歩行,50m走については,有意差は認められなかったものの男女ともに筋量が多い群のほうが筋力や運動能力が高い傾向がうかがえた.しかし,標準偏差が大きいことや知的障害児の心身の状態が多岐にわたり個人差も大きい実情についても理解する必要がある.

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© 2014 大妻女子大学人間生活文化研究所
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