抄録
本研究では,ミャンマー・チン州に位置する2つの集落,ミンダット(Mindat)とカンペレ(Kanpetlet)に住む200名余りの住民に対し,現地の環境問題と開発要件に関する知識と意識を調査した.焼畑農業における休閑期間の減少,森林資源依存性,観光の促進,地元のアイデンティティの保護および家族計画の要件について,2つの集落間にはこれらに関する知識と意識のレベルに違いが見られた.これは集落間に生じている回答者の経済的・社会的地位の違いを反映している.ミンダットの回答者はカンペレよりも収入が多く,教育レベルも高い.環境の変化に対する危機感も高かった.一方,カンペレでは森林資源依存性がミンダットよりも高く,焼畑農業における休閑期間もより短くなっていた.非木材林産物(NTFPs)を栽培することに対しても消極的であった.これら2つの集落は収入と生活水準を上げることについても異なった意見を持っていた.