2015 年 2015 巻 25 号 p. 241-244
対人関係に不安を持つ人の特徴として自尊心の低さが挙げられる.自尊心が低いことの原因として,過去のネガティブ体験,すなわち「被拒絶体験」を持つことが推測される.本研究では臨床心理学の事例論文33本を調べた.その結果,クライエントは「被拒絶体験」を直接語っていなかった.しかし,彼らは対人場面において,他者に「見せている自分」,「見せていない自分」,「見られていると感じる自分」を強く意識していた.この3つの自分の存在によって生じる苦悩が,対人関係への不安に大きく関与することが推測された.