人間生活文化研究
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学習習熟度別学級編成における高校生の自己受容感と学級適応感の関連性について(2)
小川 響
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2015 年 2015 巻 25 号 p. 262-267

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抄録

 本研究は,学習習熟度別学級編成における高校生の自己受容感と学級適応感の関連性を検証し,従来学力の変遷ばかりに注目がおかれてきた学習習熟度別学級であるが,本研究において生徒の心理的側面にも着目し現代青年期を生きる高校生の適応傾向を探ることで教育現場における適応支援に役立てることを目的とした.学校コミュニティにおける心理職の役割としては,生徒と環境の適合性を最大にする努力をすることが大きなテーマであり,教育現場における教育相談の推進にとっては個人を取り巻く学校コミュニティを重視した取り組みが欠かせない(樺沢, 2014).このため,近年広がりつつあるこの教育形態を鑑みた研究がなされることは,教育現場における臨床活動にとって意義のあることと思われた.

 調査対象者は,学習習熟度の程度により高組・中組・低組の3 群に振り分けられた進学高校に在籍する2012 年度の入学生260 名(男子153 名,女子107 名)であった.なお,発達的な視点も取り入れ,高校生活3 年間に渡り同集団を調査対象とし,縦断的・横断的に研究した.質問紙法による調査を行い,使用尺度は,宮沢(1987)の「自己受容測定スケール(SAI)」,大久保(2005)の「青年用適応感尺度」を用いた.

 各尺度の因子分析,相関分析を行った結果,高組では,友人同士の繋がりを大切にするというよりは個人の生き方を大切にし,自分の良い面を最大限に活かせるような生き方を試みることが示唆された.中組では,3 年間を通して他2 クラスよりも自分に対して自己分析的であり,分相応の生活を試みることが示唆された.最後に低組では,自分にとって誇れるものがある現実に自己価値を置き,その面を打ち出してゆくことを積極的に試みることが示唆された.また,3 クラスに共通する発達的な視点として,3 年間を通してMaslow の自己実現理論に従って徐々に自己実現に向かってゆくことがクラスでの適応の要因となっていることが示された.加えて,自己受容に関しては,発達と共に自己に対して目を向けられる面が徐々に増えてゆくことが分かり,自己受容できる側面が徐々に増えてゆくことで自己と環境とのズレを適応的に処理しやすくなることが推察された.

 生徒の所属環境により適応傾向に特徴があることが明らかにされたことで,適応支援の際の一つの知見として教員へのコンサルテーションやケースマネジメント等に応用できる可能性が示唆されることとなったが,類似研究の少なさから本研究結果の一貫性・信頼性については疑問の余地が残った.このため,他の学校においても研究を実施する等,今後繰り返し研究が重ねられることが期待された.

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© 2015 大妻女子大学人間生活文化研究所
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