2016 年 2016 巻 26 号 p. 111-120
2011年3月11日に起きた東日本大震災とこれに伴う福島第一原発事故は,日本のマス・メディアにとってその在り方を問われる試金石となった.ここで問われる「在り方」とは「何を,どう報じ」「組織をどう整え」「次にどう備えるか」という広範囲にわたるもので,メディア産業論,ジャーナリズム論,災害情報論といった様々な視点を備えた複眼的な分析が求められる.本稿ではこうした包括的研究の第一歩として行った主要マス・メディアの幹部インタビューに依拠し,全国規模のマス・メディアを中心に災害報道態勢の整備や3・11の経験の受け継ぎを中心に検討した.そこで見えてくるのは,組織の大きさゆえに進まない態勢整備の現状と,組織ではなく担当者の人的要素によって左右されがちな「受け継ぎ」の問題である.