人間生活文化研究
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ヴィゴツキーの文化・歴史的理論とロシアの補充教育
森岡 修一
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2018 年 2018 巻 28 号 p. 61-74

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抄録

 これまで継続して,ロシアの民族文化および教育政策の分析に取り組み,教育改革と教師教育の現代化に焦点を当てた海外学術調査の研究過程で,「補充教育」と「教師教育」との関連性,ならびに学校教育の枠内でのみとらえられることの多かったヴィゴツキーの心理学・教育学理論が,「補充教育」に対しても重要な理論的視点を提供していることが明らかになった.今年度は,数年間にわたる学術成果を集大成するとともに,当研究グループメンバー(NIKORS)と懇意である著名なロシア人研究者,スクボルツォフ教授(ウリヤノフスク国立教育大学)とコサレツキー教授(高等経済大学教育研究所学校社会経済発展センター長)両氏による招待講演とシンポジウム(筑波大学茗荷谷キャンパス)を開催した.

 とりわけ,2014 年のロシア連邦政府政令『子どもの補充教育の発展構想』(岩﨑正吾・早稲田大学大学院教授,森岡共訳)は,昨年に構想案2014~2017 年の第一段階が終了し,18 年から2018~2020 年の第二段階に突入するタイムリーな時期ということもあって,補充教育の今後の展望と実現の予測等について両教授との白熱した議論を展開できたことは大きな成果であった.計4 日間にわたるシンポジウムおよび長時間にわたる質疑応答によって,補充教育の具体的な問題点を解明することができ,さらにヴィゴツキー学派に対する高い評価と補充教育の今後の課題が明らかになった.われわれが,長い年月をかけて準備してきた日ロの学術交流も軌道に乗り,ヴィゴツキーと補充教育との関連性,ならびにヴィゴツキーの理論的貢献等に関しても新たなデータや知見を得ることができ,今後もさらに研究を深化させていきたい.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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