2019 年 2019 巻 29 号 p. 573-580
緒言:保育所の給食現場で働く栄養士は,子どもの発達状態に合わせた離乳食や幼児食を安全に提供し,食物アレルギー対応,子どもへの食育,保護者対応などの役割も担っている.本研究の目的は,保育所の新任栄養士(保育所経験年数3年未満)の仕事上の悩みや学びたいことに着目して,保育所栄養士をめざす学生に栄養士養成課程で教育すべき内容と保育所栄養士へのキャリアアップ支援内容を検討することである.
方法:東京都内の保育所給食担当者に対する新人研修会の参加者(保育所経験年数3年未満)を調査対象として,2018年10月に質問紙調査を実施した.研究協力者の有効回答のうち栄養士・管理栄養士80名を分析対象とした.
結果:保育所での経験年数1年未満の栄養士は,乳児期の栄養や離乳食の調理形態について困っており,経験年数1年以上の栄養士は,幼児への食育の実践方法や災害への対応について困っていた.一方,保育所経験年数を問わず困っていたことは,子どもの食事援助や献立作成,食育計画の立案であった.また,保育所経験年数を問わず今後学びたいことの上位は献立作成,乳幼児期の栄養,乳幼児期の身体的発達,子どもの食事援助,幼児期の心理・社会的発達であった.
考察:献立作成の困難さについては,保育所の特徴を踏まえて献立を作成するための対策を検討し,栄養士養成課程での教育や保育所栄養士のキャリアアップ支援に活かしていくことが望まれる.栄養士養成課程では,乳児への栄養的配慮や離乳食の事例を用いた実践的な授業内容の検討,子どもの育ちについて理解を深める教育,保育士など他職種との連携への理解を深める教育が望まれる.保育所栄養士へのキャリアアップ支援として,所属する保育所の適切な災害時対応を相談できる場や,様々な保育所での食育の事例を用いたワークショップは,新任栄養士の悩みを解決するために有効と考えられる.また,保育士など他職種との連携を図るための方法や注意点を事例に基づいて実践的に学べる機会をつくることが望まれる.