小論は,日本各地で近年増え続ける地方自治体や音楽ホールによるレコード鑑賞会が,地域の高齢者による,音楽という趣味を介したコミュニティとして創生されている状況に注目した.社会学のライフヒストリーの研究手法を用いながら,レコード鑑賞会の参加者の音楽聴取経験を解明して,歴史的・身体的な経験が公共圏でどう共有されていくかを論じた.レコード鑑賞会の参加者のタイプを3つに分け,そのうち第一のオーディオマニアへの聞き取り調査により,音楽でつながる趣味縁において,参加者同士が互いに承認関係を結んだり,地域貢献といった参加動機から社会関係資本の獲得へと活動を発展させたりする社会化の過程を明らかにした.