日本公衆衛生雑誌
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連結可能匿名化のための暗号手法
岡本 悦司
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2004 年 51 巻 6 号 p. 445-451

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抄録
 レセプトとカルテといった異なったデータを個人単位で連結(リンケージ)したり,複数の機関から個人情報を収集するがん登録のような疾病登録事業を,個人名を平文のままで行うのではなく暗号により連結可能匿名化して行う可能性を検討する。
 暗号化と解読の両方が必要な通信とは異なり,暗号化のみで足りる研究目的の連結(リンケージ)の場合,情報提供を受ける研究者が鍵を共有する必要はないので自治体や保険組合等のデータ保有者は簡単な暗号化により安全に研究者にデータ提供を行うことが可能である。
 Microsoft エクセル®を用いた人名暗号化の具体的な手法を紹介する。人名の漢字を JIS コード化し,そのコードを無作為に選んだアルファベット(大小52文字)で置換する。この数字とアルファベットの対応表が鍵であり,5.74×1016 通りの組み合わせがあることから鍵無しに解読は不可能である。これにより万一漏洩があってもプライバシー侵害が起こらない技術的担保ができ,公衆衛生研究が促進されよう。
 がん登録や脳卒中登録のような複数の機関から個人情報を収集し追跡する疾病登録事業においても公開鍵暗号を用いることにより連結可能匿名化された登録システムが可能になる。しかしながら,暗号化作業が複雑であること,登録機関からの問合わせが不可能であること,鍵を公開することにより人名と暗号との対応表を誰でも作れることから安全性は十分には保証されず,暗号のみに頼って疾病登録事業の連結可能匿名化はなおも困難である。
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© 2004 日本公衆衛生学会
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