2020 年 2020 巻 30 号 p. 490-499
図書館における利用者行動の調査や,その調査をもとにした利用者行動を分析する研究は少ない.それは,利用者の行動情報を,観察法という手法を用いて取得する困難さがあるからである.本実験の目的は,図書館を移動する利用者が持つカード(ICタグ付き)情報を,無線技術を用いて取得できる可能性があるかを確認することである.使用する機器については,図書館ですでに用いられているRFID機器を用いた.既存の機器が転用できれば利用可能性が高まると判断したからである.今回は,基礎的な実験のため,1)カード情報を受けるアンテナの特性を分析し(受信可能な範囲を特定すること),2)アンテナ特性と共に,アンテナとカードの間で,情報取得が可能な条件(電波の水分による影響を受けない条件)を確定すること,3)利用者が書架間に入る情報を取得するために必要なアンテナ位置等の条件を確認することの3点をまとめた.その結果,1)図書館で利用しているアンテナ(貸出し返却時に机上で使用する平面アンテナの場合)には指向性が高く,狭い範囲でのみカード情報を取得できることが判明した.また,2)今回利用したRFID機器は水分の影響を強く受けるUHF波を使用しており,人体からカードをある程度離すための解決策を講じる必要を確認し,解決策の一つを提示できた.3)の利用者が書架間に入る情報の取得は,アンテナの角度や高さを調整することで検知可能であることが判明した.ただし,比較的狭い範囲での検知なので,複数のアンテナで補完する必要性も感じた.図書館で利用されている機器を使うという条件下ではあったが,移動する利用者の情報を検知することは十分に可能で,アンテナ特性を変更する(アンテナ機種自体の変更も含め)ことで,より精緻な移動情報が取得可能であることも確認できた.