人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
ISSN-L : 2187-1930
報告
特別な支援が必要な子どものアセスメントと継続的な支援の方法に関する一考察
―A市における配慮・支援が必要な子どもの移行期の情報引継ぎの手引きの普及のための教員向け説明会の有効性の検討―
大久保 圭子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 2020 巻 30 号 p. 81-91

詳細
抄録

 A市において作成された「特別な支援・配慮を必要とする幼児児童生徒の移行期の支援継続の手引き(第1版)」(以下,手引きと称する)に係る説明会について,説明会に参加したA市立保育所,幼稚園,小学校,中学校の保育士及び教員(以下,教員等と称する)全員に対し質問紙調査を行うことにより,説明会の有用性に関する参加者の意識を明らかにすることを目的とした.

 調査結果より説明会において,参加者は手引きの目的や趣旨,個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成の仕方,移行期における支援の引継ぎに関する1年の流れ,支援の引継ぎに関するコーディネーターの仕事について概ね理解できたと捉えていた.しかし,全ての項目において「理解できた」より「ある程度理解できた」が上回っていたことから明確な理解にまで至っておらず,実際の運用に当たり疑問が生じる可能性が考えられた.

 一方で,説明会を実施したことにより,手引きは活用しやすくなったと9割近くが捉えており,手引き活用に関して説明会の有効性が示唆された.また説明会を実施したことによる効果として,手引きを読むだけでは理解しづらかったことが説明会において説明を受けることにより理解が促進されたことや,説明会で教員等が会することにより情報共有と共通理解の場として有用であったとする意見,説明会の場で直接質問や相談すること等により疑問点が解消した等の意見などから説明会を実施したからこその成果が確認された.

 これらのことから,A市における手引きの全教員等への普及のための説明会の取組は支援引継ぎに係る組織的な対応の基盤として一定の有効性を示しながらも,説明会が制約された時間の中で行われたため伝達すべき内容が必要最小限にとどまったことなどから明確な理解に至っておらず,今後,特別支援学校のセンター的機能の一つである研修機能等を活用し,教育委員会等との連携を図りながら,移行期の円滑な引継ぎに係る研修会を企画し,理解や啓発を行っていく必要がある.

著者関連情報
© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top