近代教育フォーラム
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教育思想における臨床知伝承の可能性と限界(報告,シンポジウム 教育学における臨床知の歴史)
鈴木 晶子
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2001 年 10 巻 p. 129-141

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抄録

臨床知は実践知と同様に、臨床実践を含めた実践一般を研究対象とすると同時に、その対象と関わること自体が学問的営為でもあるような教育学や臨床医学など実践的学問の根底を支える知恵だといえます。この専門家の知恵ないし術を一定の確実さをもって働くものとして専門家の間で共有できるようにするための努力は、古代ギリシアのレトリックをはじめとして、ルルスによる図表、ライプニッツによるフレーミング法、さらにはヘルバルトの教育地図など一連の系譜となりました。本報告では、こうした臨床知の確立と伝承の試みを思想史的観点から概観することを通して、そうした試みのもつ落とし穴、すなわち臨床知の働き方の画一化や実践の根拠なき正当化といった問題を確認します。と同時に、単なる図表による技術化ないしパターン化には収まりきらないような、こうした思想系譜の特質について、フーコーやドゥルーズのダイアグラムの思想を手がかりにしながら考察し、今後の臨床知伝承の可能性についても検討しています。

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