近代教育フォーラム
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「受動的」な未来予測から「能動的」な価値の提示へ(コメント論文,遺伝学と教育の思想史,Forum 2)
森岡 次郎
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2006 年 15 巻 p. 71-79

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抄録

金森氏が指摘するように、これまで、人間の遺伝的特性に対する人為的介入は、安易にナチズムへと結びつけられ、「紋切り型の批判」によって断罪されてきた。しかし、個人の自発的な選択と科学的(遺伝学的)妥当性に支えられた新優生学的趨勢において、そうした批判は効果を失いつつある。金森氏は遺伝子改造を部分的に許容する可能性を提示すると同時に、「何でもあり」とならないたあの倫理原則を提示しているが、この倫理原則はその概念や適応範囲の曖昧さから、十分に機能するとは考えにくい。教育という営みを研究対象とする私たちには、遺伝学の発展を「受動的」に後追いすることによって近未来を予測するだけではなく、教育現実のなかからリベラリズムに対するオルタナティブとなりうる価値を「能動的」に提示することが可能なのではないだろうか。

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