2006 年 15 巻 p. 133-141
経済・情報のグローバリゼーションは、現代社会の主要な特徴と見なされている。日本全体を考えるなら、それが社会構造に与えている影響は緩慢としているが、それが教育に与える影響はこれからますます大きくなるだろう。ここで注目したいことは、このグローバリゼーションとともにモンディアリザシオンが進行していることである。モンディアリザシオンは、デリダによれば、パウロ的キリスト教に由来する普遍的な人間性概念が世界に広がることである。デリダが論じているように、この人間性概念の広がりは「純粋で無条件の赦し」を覆い隠されかねない。それは、私なりに拡張していえば、<(世界化する)世界からの緩み>が見失われることにつながっている。グローバリゼーション、モンディアリザシオンの流れのなかでは、国際的な人材育成、普遍的な人間性涵養のプログラムが提案されるだろうが、その流れのなかで、私たちの<(世界化する)世界からの緩み>が縮減されることも知っておくべきだろう。