2012 年 21 巻 p. 103-114
学校の共同性の再検討を目指して、国民の教育権論の批判的整理と持田栄一の再評価を行った。まず、国民の教育権論を再検討する中で、その問題点が、子どもの参加権論や学校における学習権保障の近年の研究とも共通する特徴を持つことを指摘した。その上で学校の共同をめぐる五つの課題を指摘した。第一に、「教育共同体」と持田が呼んだような、社会における共同性の組織をどうするかという観点から学校のカリキュラム編成を考えるべきこと、第二に、親・市民・教師・地域といったそれぞれの概念を一枚岩としてとらえないこと、第三に、複数の対立する要求が相互に批判し自らを問い返す場として教育課程編成を位置づけるべきこと、第四に、学校を独自の政治空間として再定義すべきこと、第五に学習権を抽象的な権利項目にとどめず具体的に権利目録化すべきこと。