人文地理学会大会 研究発表要旨
2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 205
会議情報
『京都地籍図』を用いた近代京都の景観復原
GISを援用した空間基盤データの整備
*井上 学矢野 桂司磯田 弦高瀬 裕中谷 友樹河原 典史塚本 章宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本研究は、『京都地籍図』とGISを用いて大正元年当時の京都の景観を1筆単位で復原することを試みる。『京都地籍図』は、上京区・下京区・接続町村の3部で構成され、それぞれ地籍図と付属の土地台帳(以下、付属台帳)にわかれている。地籍図には土地1筆ごとの地番・面積、一部には学校・寺社名などが、付属台帳には地番・面積・地価・等級・所有者住所・所有者名など、景観復原の際の重要な事項が記載されている。これらの土地1筆に関する様々な情報は、GISを用いることで一元的に管理できる。それによって当時の土地所有者、地価、等級を現在のデジタル地図情報と比較することも可能となる。さらに、『京都地籍図』を空間基盤データとし、地籍図以外の資料のデータを付加することで、様々な景観復原に活用できる。GIS化を行ったのは御池通・鴨川・四条通・堀川通に囲まれる範囲である。2次元デジタル地図と地籍図の重ね合わせには、画像データを元に1筆ごとの土地をポリゴン化し、「アジャスト」機能を利用して現在のデジタル地図に重ね合わせる方法を用いた。対応する属性データとしては、付属台帳に記載されている地番・地目・面積・地価・等級・所有者住所・所有者名を1筆ごとにデータ入力を行った。それにより、データ内容を地図上に反映することができる。以上の方法を用いて、『京都地籍図』と2次元デジタル地図を重ね合わせた結果、おおむね高い精度で現在の2次元デジタル地図との重ね合わせできた。付属台帳に記載されている等級を反映させると、当時の土地は新京極錦小路の124等級を頂点として南北に123等級、122等級の筆が広がる。また現在の京都の大きな繁華街である河原町通の等級は相対的に低いことが大正元年当時の景観復原により明らかとなった。さらに、この土地割りのデータを利用して大正元年当時の景観の3次元化を行い、多数の建築物からなる町並みの再現も行った。

著者関連情報
© 2004 人文地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top