人文地理学会大会 研究発表要旨
2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 108
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小中学校教科書におけるアフリカ表記の課題
社会科6年下と中学地理を例として
*西岡 尚也
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抄録

小中学校時代に形成された「地理的見方や考え方」は生涯にわたって世界認識形成や地域イメージを左右する。本発表ではこのような地理教育の役割を考え、特にアフリカに関わる記述に焦点を当て考察した。検討したのは2004年4月現在使用されている、小学校社会6年下5冊、中学校地理7冊の合計12冊の教科書である。 6年下でアフリカの国を取りあげ詳しく記述した教科書はない。かつ5冊の教科書に登場するアフリカに関わる写真は合計19枚しか存在しない。しかもそのうち14枚が、「飢えに苦しむ」「食糧配給を待つ」「難民」「紛争」「砂漠化」などのマイナス面を表している。私にはこれらで学ぶ子供たちに、アフリカ大陸の「悲惨さ」のみが誇張されて伝わり、誤った地域イメージが形成されると思えてならない。 明治初頭の福澤諭吉(1869)『世界国尽』は、異文化地域にランク付けし、欧米以外の文化地域を蔑視した世界観を「啓蒙」した。当時の福澤の視点は、欧米人の世界観を「模倣輸入」したもので、福澤一人の問題ではなかった。しかし今日の日本人の誤った世界認識形成は「日本の地理教育の責任」である。 開発教育では「多様性の尊重」を重視している。私たちはこの視点に学び、福澤以来の欧米以外の地域への偏見を改めなければならない。そのためにも地理教科書では「正しい世界認識」をめざした表記が重要になる。

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© 2004 人文地理学会
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