人文地理学会大会 研究発表要旨
2005年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 305
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大手医薬品企業の生産拠点・研究開発拠点の再編成
*佐藤 裕哉
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抄録
日本の医薬品産業は, 1970年代後半から進んだ規制緩和(1976年の特許法改正,1983年の薬事法改正)により外資系企業の参入が容易となり,グローバルスケールで研究開発競争が激化している。一方,1961年の国民皆保険の達成以来,高騰し続ける国民医療費を圧縮するため,厚生労働省によるジェネリック医薬品(後発品)の利用促進や薬価の引き下げが続いており,近年では市場規模の拡大は期待できなくなっている。このような厳しい経営状況の中,各企業は企業活動存続のために生産拠点や研究開発拠点の統廃合など様々な対応をとっている。上記に鑑み本研究では,大手医薬品企業を対象に,生産拠点・研究開発拠点の再編成の実態把握と,その要因を明らかにすることを目的とする。研究方法は,プレスリリースや,有価証券報告書,社史,新聞報道などから企業ごとの再編の実態を把握したうえで,企業本社への聞き取り調査(一部,アンケート調査)を行い,再編の背景にある要因などについて探った。協力が得られた8社の,日本国内における生産拠点・研究開発拠点の統廃合の動向,海外への立地展開,分社化の動向,バイオベンチャー企業との提携などに関する分析から以下のことが明らかとなった。まず,日本国内においては,首都圏の老朽化した生産拠点を中心に統廃合を行うことで生産の効率化を図っている。その一方で,筑波などへの研究開発拠点の新設や閉鎖した生産拠点を研究開発拠点にするなどして研究開発への投資を強化している。また,こうした国内の動きと同時に,生産はアジア,研究開発は欧米というようにグローバルスケールで拠点の再編成を行い,激化するグローバルな研究開発競争に対応していることが明らかとなった。
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© 2005 人文地理学会
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