人文地理学会大会 研究発表要旨
2005年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 504
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佐賀平野における米麦大豆の複合化による水田農業の確立
*高柳 長直
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抄録
 日本において,米生産の過剰基調,輸入米の増加圧力,担い手不足と,水田農業をめぐる生産環境は厳しさを増している。そこで,着目されるのが,集落営農による米麦大豆の複合化である。これによって,期待されることは,経営全体の収益を確保して経営基盤を強固とすること,中長期的視点から生産調整の達成を図ること,国際競争力ある大規模経営体の育成を図ることである。本報告では,佐賀平野を事例として,水田農業の営農環境の変化の中で内発的な主体の対応実態と土地利用効率を高めた水田農業の確立のための課題を考察する。 生産調整を行うとともに,生産規模拡大を促して経営効率を改善するための方向として,団地化と土地利用集積の2種類ある。佐賀市の場合,団地化の方で助成金を5,000円高くして,実質的に農作業の効率を向上させることをねらうようになった。 事例として佐賀市の西端部に位置するE地区をとりあげ,集団化の経緯,転作と作付の状況,経営等の分析を行った。 佐賀平野のような土地利用型農業地域において,平坦地の特性を生かしていくために,水稲+大豆+大麦の土地利用型農業を確立していくことが求められる。そのためには,集落営農を再評価してブロックローテーションを効率的に実施していくことが一つの方向性として重要であろう。佐賀平野において集落営農を重視していく理由は,大きく2つのことがあげられる。第1に,ほぼすべての農家が兼業化している状況の中で,農作業を分担しながら作業効率を高めていく必要があるからである。第2に,圃場整備によって水田の大型化と整形化が行われたものの,それでも諸外国と比べると分散錯圃状態であるといわざるを得ないからである。地区内における機械化された農作業を効率的に行うためにも集落営農は有効であろう。
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