抄録
愛知県常滑市では、1953年から競艇事業を実施している。本発表では、当事業の実施に女性労働力がどのように関わってきたのかを、労働組合運動を中心に明らかにする。
常滑競艇事業のみならず、公営ギャンブル全体を通しても「女性労働力」に関する言及は極めて少ない。参与観察とオーラル・ヒストリー法を用いた研究の結果、次の点が明らかとなった。
(1)1953年以降、常滑競艇場では舟券の販売等主たる開催業務に「女性」を雇用。(2)1979年の就業規則制定以前の賃金体系は不明確。(3)2005年現在に至るまで法的立場は「日雇い」。(4)公営ギャンブルの開催日数制限(年間180日)によって、日雇労働雇用保険の受給が不安定であった。(5)1980年代、販売業務の機械化に抵抗するように組合が発足。(6)一般雇用保険、厚生年金等の適用を目指し闘った。(7)1990年代以降、雇用保険や一般健康保険、育児休業、介護休暇など諸種の権利を獲得。(8)圧倒的多数の男性客に対する奉仕的労働内容。
以上の点から、公営ギャンブル制度の維持にジェンダーが深く関与していると結論できる。この点を、「ギャンブル空間」概念の精緻化へ組み込んでいきたい。
なお本研究の実施にあたっては、お茶の水女子大学COE「ジェンダー研究のフロンティア」公募研究の助成を受けた。