人文地理学会大会 研究発表要旨
2007年 人文地理学会大会
セッションID: 108
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第1会場
弘前市立弘前図書館所蔵の幕末箱館千代が岱陣屋関係絵地図について
*戸祭 由美夫出田 和久平井 松午小野寺 淳中尾 千明
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抄録

[研究の目的とこれまでの研究進展状況]  江戸時代の後半に幕府は、欧米列強の近海への進出に対抗して箱館奉行を新置するとともに、東北諸藩に対して蝦夷地沿岸部の防備を命じた。それに応じて建設された幕府の箱館奉行所や各藩の陣屋に関する詳細な設計図や完成図、あるいは警備担当の沿岸図が作成された。現在もそれら多種・多様な絵地図が、箱館奉行所の所在地たる函館市や東北諸藩所在地の図書館・博物館などに(一部未整理のままで)保存されている。そこで、6名のメンバーで共同研究「北海道・東北各地所蔵の幕末蝦夷地陣屋・囲郭に関する絵地図の調査・研究」を企画し、科研費(17320132、代表者:戸祭)を得て、各地の所蔵機関のご協力のもとに絵地図の実物を閲覧し、必要に応じてデジタル画像化して整理し、それらの来歴・系統と相互の関係を、地図学的かつ歴史地理学的に明らかにすることを目指している。 [津軽弘前藩作成・書写の幕末蝦夷地関係絵地図]  津軽弘前藩が作成・所蔵した近世資料の過半は、現在、弘前市立弘前図書館に保管されており、ほかに弘前市立博物館にも一部保管されている。それら資料の中で、青森県内を描画対象とした絵地図類に関しては、青森県立郷土館による近世海岸絵図を中心とした調査によって概要が明らかにされているが*)、本来の対象とする幕末蝦夷地関係の絵地図については触れられていない。 そこで、2006年8月に戸祭・出田・平井・小野寺の4名で弘前市立弘前図書館に、同年10月13日に戸祭・米家[山田]志乃布の2名で弘前市立博物館に、翌2007年6月7日に戸祭・中尾の2名で再び弘前市立弘前図書館に、館蔵の幕末蝦夷地関係絵地図の調査に赴き、多様な絵地図を閲覧・デジタル撮影させていただくことができた。 [弘前市立弘前図書館蔵の箱館千代ヶ台陣屋関係絵地図] 弘前市立弘前図書館では14種の絵地図を閲覧・撮影することができたが、なかでも、「箱館千代ヶ台御陣屋取建立之図」(GK526-15)と総称される全42枚(館の目録では35枚と記されている)の絵地図類は、伊達仙台藩が1805年に当時の箱館市街地北方に建設した元陣屋をもとに、1855年の幕命に依って津軽弘前藩が改築した陣屋の状況を極めて明瞭かつ詳細に示している。この通称「津軽陣屋」ないし、現在の函館市千代が岱町にあったことから「千代が岱陣屋」と呼ばれる陣屋に関しては、従来資料皆無で具体的なプランは不明とされていた。この絵地図群は、内容の点から大きく次のように区分できる。 _丸1_陣屋全体の位置・規模を示す図…16,29 _丸2_陣屋囲郭及びその内部の建物群の建築プランの変化を明瞭に示す図…5,28,31~34,42 _丸3_上記の建物群(一陣~七陣)の建物ごとの間取りの変化を詳しく示した図…2~4,6,8,10~14,22~25,30,36~41 _丸4_表門・裏門・物見櫓の立面図…20,21,26 _丸5_矢場・星場の平面図と立面図…18,27 _丸6_その他…1,7,9,15,17,19,35 [本発表の方法と内容] 以上の_丸1_~_丸6_の6群はそれぞれ興味深い内容をもっており、本年3月の日本地理学会春季大会では_丸2_の5枚の絵図を取り上げでポスター発表したので、今回は_丸1_~_丸6_の6群の全容をOHPでお示しし、幕末の蝦夷地陣屋のひとつの典型を具体的に理解いただけるようにしたい。

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