抄録
乗用車保有率の地域差を説明するため、ローカル回帰モデルの推定を試みた。単位人口1,000当たり乗用車車両台数を基準変数とする地理的加重回帰モデル(GWR)と二つの種類のグローバル回帰モデルとを、日本全国の2,668市区町村ごとに収集した2005年のクロスセクションデータに対して当てはめた。二つの種類のグローバル回帰モデルとは通常OLS回帰モデルと空間回帰モデルSEMとである。説明変数としては世帯所得と人口密度の2変数を基本モデルにおいてとりあげた。また、これらに女性労働力率を追加した3変数を拡張モデルにおいてとりあげた。モデル推定の結果によれば、GWRはグローバル回帰モデルよりもはるかに高い適合度と信頼性を示していた。GWRで得られたローカル統計量の地理的分布を読みとることで、乗用車保有率の地域差に影響を与える空間的変動因、つまりは所得、人口疎密および女性の社会進出の各要因が空間的にどこまで変動しているかを考察した。