本報告では、インドネシア農村地域における観光振興への取り組みの現状と課題について、スマトラ島南部のランプン州および同州ワナ村を事例に考察する。 インドネシアの全人口に占める外国人旅行者数の割合は2%と推測されており、他のアジア諸国と比較すると低い。これはインドネシアにおいて外国への旅行が可能な人々が一部の富裕層に限られているためである。しかし、ジャワ島とりわけジャカルタ首都圏では1990年代からの急速な経済発展に伴い、それらの地域からの中流階級以上による国内旅行は増加している。 一方で、2001年に地方分権を目標とした地方自治法が施行されると、国内旅行の増加を背景に、各州独自による観光計画の策定とそれによる地域振興への取り組みも模索されるようになった。