抄録
腹いっぱいうまいものを食えるということは,人類が人類になる以前からの願望であるとともに,これからもそうあり続けるだろう。今日の世界を見渡しても貧困や飢餓が解消されたわけではなく,多くの人々が腹いっぱい,満足のいくまで食えない状況は至る所にある。日本に暮らす私たちにとって,腹いっぱい食えないということは現実的ではない。しかし,大量生産された高カロリーの加工食品が氾濫し,誰がどのようにして作ったかも知らないままに日々の食材を消費する。さらに近年は食の安全や安心が脅かされる事件が頻発している。私たちははたして本当にうまいもの(良質食品)を満足のいくまで食べられているのだろうか。食べ物のことをどうこう言うのは卑近なことではある。しかしそれ故に人類の永遠のテーマでもある。このテーマに対して地理学はどのようなアプローチを展開できるだろうか。