抄録
政策研究において理論的な支柱であるソーシャル・ネットワーク(Social Network : 以下SN)論は,従来の研究では, SNの構造,機能,分析手法,個人の視点からの活動継続要因などの解明が中心となっていた.しかし,事業の運営組織におけるSNの形成や変化並びに政策の継続的な実施との関係に焦点をあてた研究は十分でなかったと言える.
ところで,現在,持続可能な社会の構築のために地球規模で様々な政策が展開されている中,特に,国際連合は,2005年から2014年までの10年間を,UNDESD(UN Decade of Education for Sustainable Development:以下UNDESD)の実施期間に定め,そのもとで数多くの地域がESD(Education for sustainable development : 以下ESD)活動に積極的に取り組んでいる.途中の2009年にはボン宣言がだされ,ESD活動をさらに推進するためにはSNを含むネットワークの強固な構築や活用の重要性が強調されている.
そこで本研究では,上記のSN論の不十分さを補う目的として,北九州市でESD活動の中心的な役割を果たしている北九州ESD協議会を対象に発足段階から現在に至るまでの同協議会の構成団体に属し活動に関わる個人間のSNの形成や変化を整理し,SNとESD事業の継続性の関係を明らかにしたい.