人文地理学会大会 研究発表要旨
2010年 人文地理学会大会
セッションID: 406
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第4会場
立地特徴と自治体別制度の違いからみた店舗別お買い物袋持参率の差異
(株) 平和堂を対象として
大西 直樹*香川 雄一
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抄録

レジ袋などの容器包装廃棄物は,廃棄物最終処分量の約60.1%を占めるため,その処理や削減が緊急の課題になっている.現在,全国各地の自治体や企業・団体ではレジ袋を削減するために,レジ袋の有料化や,積極的に消費者に「お買い物袋持参」を促すための運動を行っている.しかし,同じような運動を行っていても,その効果は地域や店舗によって異なってくる.  そこで本研究では,「お買い物袋持参率」の差異に影響を及ぼしているものは何かを明らかにすることと,今後お買い物袋持参を促すのに有効な条件を導き出すことを目的とする.本研究の意義は,今後全国的にますます求められている,商品購入時におけるお買い物袋の持参を促す運動の参考となることである.  (株) 平和堂は,食品販売のほか衣料や雑貨などの販売も行っている総合スーパーにあたるが,算出している持参率は,食品売場のみのデータである.持参率には,食品レジにおいて,お買い物袋を持ってきた客をカウントするのではなく,レジ袋を辞退した客をカウントし,割合を示している.  2001年度当初は各店舗によって持参率にばらつきが見られるが,年度が経つにつれて店舗間のばらつきは小さくなってきている.また,ほとんどの店舗は年度が経つにつれて持参率を上げていることが分かる.しかし,店舗によっては持参率に約2倍近くの差異があり,まったく同じ持参運動を行っている企業内でも持参率にかなりの差が生じることが伺えられる.  自治体別制度の違いと持参率との関係性を調べるために,自治体別の持参率を算出した.自治体別持参率平均は,その自治体に所在している店舗の持参率を平均するのではなく,店舗の客数・持参件数を加重平均することで算出している.(株) 平和堂の店舗が立地している13市5町の自治体別持参率を算出した結果,店舗間ほど持参率に差異は生じていないが,自治体別に約10%も差異があることがわかった.  滋賀県内13市13町(2008年12月時点)の「ごみ収集」制度の現状を把握し,相関分析により関係性を調べた.  分別数は7種類~21種類と自治体によって大きく異なっていることがわかる.主に,ビン・缶類によって分別数に差が生じている.自治体別ごみ収集制度と持参率の相関分析の結果,相関比の検定より,「持参率」と「ごみの分別数」の間に相関がみられた.ごみの分別数が多くなるほどお買い物袋持参率が減少する(5%有意)ことが分かった.  消費者がお買い物袋を持参するか否かという判断と行動に繋がる要因に,店舗の規模や所在地の地理的立地要因といった店舗独自の特徴が大きく関係していると考えられる.したがって,滋賀県内に所在する全70店舗の店舗規模や地理的立地条件を把握し,相関分析によって持参率との関係性を調べる.各店舗の地理的立地条件を把握するため,土地利用状況を数値化し,割合表示できるメッシュ法を用いた土地利用図を作成した.  全店舗の作業をした結果,(株) 平和堂の立地特徴を5つに分類することができた.工場地帯に隣接している店舗では持参率が低く,商業用地が多く分布している箇所にある店舗では,持参率が高いという傾向をつかむことができた.相関比の検定結果より,「持参率」と「工業地帯割合」「住宅地割合」「商業・業務用地割合」の間に強い相関がみられた.このことから,工業地帯割合が増加すると持参率が減少し,住宅地割合と商業・業務用地割合が増加すると持参率が増加する(1%有意)ことがわかった.また,「持参率」と「農地割合」の間に相関がみられる.農地割合が増加すると持参率が減少する(5%有意)ことがわかった.その他の土地利用割合との間には,有意な相関は見られなかった.  滋賀県内 (株) 平和堂各店舗の商圏を設定することで,その商圏内の人口構成を把握することができる.各店舗商圏内の人口構成の違いを把握し,相関分析によって持参率の差異との関係性を調べる.  小地域データを扱うことができる「統計GIS」を利用し,人口構成の把握を行った.  相関比の検定結果より,滋賀県内の小地域統計データによる各店舗商圏内の人口構成とお買い物袋持参率との間には,有意な相関は見られなかった.そこで,2005年度のお買い物袋持参率の標準偏差をだし,持参率の上位10店舗と下位10店舗を抽出し,統計データの平均値と比較分析を行った.  レジ袋有料化が全国的に取り組まれてきているが,消費者にとってお買い物袋を持参せざるを得ない運動より,消費者が自主的に取り組める運動が今後の地球環境のためになると考える.本研究の成果を踏まえ,行政・事業者・市民の3者によりお買い物袋をさらに持参しやすい環境を整える事が期待される.

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