人文地理学会大会 研究発表要旨
2010年 人文地理学会大会
セッションID: 408
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第4会場
NPO・ボランティア団体を中心とした地域防災への取り組みの展開と意義
名古屋市緑区を事例として
*前田 洋介
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抄録

 近年,NPOやボランティア団体は,「公」の新たな担い手として期待されている。特にローカル・レベルでは,NPOやボランティア団体への自治体の関心が高まるなか,福祉や防災をはじめ,様々な分野において,NPOやボランティア団体による公的課題への取り組みが目立つようになってきている。また,NPOやボランティア団体は,「地域(社会)」の再生の文脈のなかでも注目されている。地域福祉や安心・安全などの観点から,「地域」を,社会的紐帯に根ざした相互扶助が機能する場として,また,「地域」の課題を自律的に解決する場として再構築することが議論されるなか,従来「地域」を担ってきた地縁組織と並び,NPOやボランティア団体はその新たな担い手としても期待されている。
 NPOやボランティア団体の公的な役割や「地域」との関係については,これまで政策や理論レベルで多くの議論が展開されてきた。しかし,行政や企業とは異なる固有の社会的機能や特徴を持つNPOやボランティア団体が,独自のネットワークを形成しながら公的課題に取り組むことが一般的な現象となりつつあるなか,そうした活動の展開過程や意義について,具体的な事例を通じた実証的検討もまた必要である。特にNPOやボランティア団体と「地域」との関係をめぐっては,ややもすれば,これまで「地域」は抽象的な地理的・社会的単位として扱われていたといえるだろう。しかし,ひとえに「地域」の担い手と言っても,たとえば,NPOやボランティア団体と地縁組織とでは,メンバー間の紐帯の地理的・社会的特徴は異なるものである。NPOやボランティア団体が「地域」において存在感を高める背景を探るには,こうした「地域」内のミクロな社会関係や,「地域」の文脈にも目を向けていく必要があるだろう。
 以上の問題意識をもとに,本報告では,近年活動が活発化している,名古屋市におけるNPOやボランティア団体を中心とした防災への取り組みを事例とし,活動の展開過程と「地域」における意義を,特に「地域」内外に築かれている主体間の関係に着目して検討する。さらに,活動が支えられる背景について,メンバーへのインタビュー調査をもとに,特にこうした活動における社会関係の地理的・社会的特徴に着目して考察する。また,このような活動が体現する「地域」の意味についても考えていく。

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