抄録
秩父盆地の尾田蒔面上に堆積するチバニアン期テフラ
群から17 層のテフラ試料を採取し,粒子組成・重鉱物
組成や直方輝石・角閃石類の斑晶鉱物の屈折率を分析し
てテフラの対比を再検討した.最下位のOD1 テフラは,
これまでの記載と異なる岩石記載的特徴を示したが,関
東地方西部のKap-5 テフラと対比可能であった.4 層
の黒雲母に富む細粒火山灰(OD6,OD9,OD11,お
よびOD15)は大町APm テフラ群のA1Pm ~ A4Pm
にそれぞれ対比されたが,八ヶ岳火山東麓のYt-hop テ
フラに対比可能なテフラは見出せなかった.またOD2
では510 ± 160 ka の,OD6 では350 ± 70 ka およ
び356 ± 29 ka の,ジルコン結晶を用いたフィッショ
ン・トラック(FT)年代(誤差は各1 σ)を得た.さ
らにこれまで同一の手法,機関で実施された全てのFT
年代を総合し,関東地方に分布するA1Pm の加重平均
FT 年代として375 ± 21 ka を求めた.これらOD2
やA1Pm(OD6)のFT 年代などから,尾田蒔面は約
500 ~ 600 ka に形成されたと推定される.