兵庫県南部沿岸域の中期更新世以降の地殻変動量の基
礎データ得ることを目的として,神戸市垂水区高塚山の
露頭試料と,同灘区石屋川のボーリングコア試料(石屋
川南コア)についてMIS11 の層準(大阪層群のMa9 層)
を対象に珪藻分析を行った.そして,神戸市灘区,東灘
区のボーリングコア試料(摩耶コア,東灘コア)の同時
期の珪藻群集データと比較した.露頭試料からは淡水か
ら内湾環境への環境変遷とともに,最大海進期とみられ
る, 海水浮遊性種の産出頻度が最大となる層準が見られ
た.これは摩耶および東灘コアの,MIS11.3 の温暖期
と考えられる,同様の最大海進期の層準に対比される可
能性が高く,高塚山のそれとの標高差はそれぞれ338.9
m,318.0 m であった.またそれらの変位速度は約0.8
m/ 千年と求められた.これらは,六甲・淡路島断層帯や,
大阪湾断層帯の一つである和田岬断層による相対的な変
動量と考えられる.石屋川南コアについては明瞭な海進
の層準は捉えられなかったが,摩耶および東灘コアの海
成層準と比較すると約80 ~ 110 m,60 ~ 90 m の標
高差がみられた.
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