2015 年 84 巻 2 号 p. 99-105
高品質なリンゴを生産するためには,摘花・摘果は必須である.薬剤による摘果が世界中で行われているが,隔年結果を防止し,高品質なリンゴを生産するためには着果量を厳密にコントロールする必要があり,そのための人手による摘果は依然として重要な作業である.本研究は,人手による摘果作業時間を左右する要因を調べ,品種による摘果作業時間の違いを明らかにすることを目的とした.花そうあたりの摘果にかかる時間は,いずれの品種でも落花後には短くなっていくが,この短くなる程度が品種によって異なった.摘果にかかる時間は,幼果が自然に落果する時期と量に依存していた.果そう内の幼果の数が 4,5,6 個では摘果に要する時間に大きな違いはなく,幼果の数が 2 個および 3 個となると,半分の時間で摘果できるようになった.すなわち,果そう内の幼果が 3 果以下になると,摘果に要する時間は大きく減少する.腋芽果そうの摘果に要する時間は,開花後 7 日目までは徐々に増えたが,その後は減少した.1 日 6 時間摘果作業に従事した場合,開花 10 日後から 30 日までに摘果できる面積は,開花後 15 日目に 3 果以下の果そう割合が 50%となるような品種では,一人あたり 24.3 a となり,開花後 30 日目に 3 果以下果そう割合が 50%となるような品種より,40%も広い面積を摘果できた.したがって,果実が早くさらに多く落果する品種を導入することが,摘果を省力化する一つの解決策となる.