The Horticulture Journal
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原著論文
D クライオプレート法によるカキ冬芽茎頂の超低温保存
松本 敏一山本 伸一福井 邦明Tariq RafiqueFlorent Engelmann新野 孝男
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2015 年 84 巻 2 号 p. 106-110

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抄録

超低温保存は,植物遺伝資源の長期保存法として有効な手法となっている.カキ‘西条’(Diospyros kaki Thunb.)の冬芽から摘出した茎頂を用いて,乾燥法による新しい超低温保存法である D クライオプレート法による超低温保存法を検討した.2013 年 1 月に島根大学農場より冬芽を付けた休眠枝を収集し,2°C で貯蔵した.表面殺菌後,1 mm の大きさに調整した茎頂を冬芽から摘出し,0.3 M ショ糖を含む 1/2MS 固形培地に置床し,25°C で一晩の前培養を行った.その後,アルミニウムクライオプレートのウエルに茎頂を入れ,アルギン酸カルシウムで固着させた.LS 液(2 M グリセリン + 1.0 M ショ糖を含む 1/2MS 培地)に茎頂を付着したクライオプレートを 25°C で 30 分間入れ,凍害防御処理を行った.クリーンベンチ内に茎頂を付着させたクライオプレートを置き,30–90 分間の風乾を行い,液体窒素で直接冷却した.1.0 M ショ糖を含む 1/2MS 液体培地にクライオプレートを入れ,25°C で 20 分間の昇温を行った.本実験では 0.3 M ショ糖による前培養による再生率向上効果は認められなかったが,他の品種への応用やジーンバンクでの実用面を考えると D クライオプレート法の手順に加えるべきと思われる.高い再生率(84%)は30 分間の乾燥時間で得られ,この条件で他の 10 品種のカキで比較したところ,67–97%の再生率となった.冬芽は高い低温耐性を持つことから,冬芽を用いた D クライオプレート法はカキの超低温保存に有効な方法であると考えられる.

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