2017 年 86 巻 1 号 p. 52-60
ピーマンの果実肥大初期における植物ホルモンの役割を解析した.小型果実の 2 系統のピーマンを用いた試験において,サイトカイニン処理は,ジベレリンやオーキシン剤の処理より果実肥大効果が高かった.そこで,小型果実及び中型果実をつける 4 系統のピーマンの受粉果実と未受粉果実を用い,その内生サイトカイニン,3-インドール酢酸(IAA)およびジベレリン(GA)量を調査した.受粉果実では,いずれの系統でも,果実が大きくなるにつれてトランスゼアチンリボシド量が増大したが,未受粉果実でこの増大は認められなかった.IAA 量は未受粉果実と受粉果実であまり差が認められなかった.活性型ジベレリンである GA1 の量は,未受粉果実の肥大の良い系統で比較的高く,未受粉果実が肥大しない系統では少なかった.これらの結果より,トランスゼアチンリボシドが受粉したピーマンの初期の果実肥大に重要なことが示された.また GA1 も初期の果実肥大,特に未受粉果実の肥大に役立っていることが示された.