保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
日本列島太平洋岸の岩礁潮間帯の海藻群集における7つの希少性
野田 隆史深津 雪絵奥田 武弘堀 正和仲岡 雅裕山本 智子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2005 年 10 巻 1 号 p. 1-10

詳細
抄録
岩礁潮間帯生物では希少種の保全に必要な情報はごく限られている.そこで太平洋岸の岩礁潮間帯の海藻を対象にRabinowitz (1981)による希少性分類を適用し, 各カテゴリー間で含まれる種の生物学的特徴の違いと, 海岸ごとの希少種数と群集の特徴の関係を検討した.北海道から九州までの太平洋岸に1500コドラートを設定し, 2003年春と夏に2回, 出現種と総被度を調べた.種名が判明した真潮間帯種でかつ2コドラート以上に出現した83種を解析対象に, 生息地の特殊性(潮位と波圧から求めた生息範囲), 個体群密度(生息可能な環境における出現頻度)および, 地理的分布域(緯度範囲)を求め, Rabinowitzの各カテゴリーに分類した.その結果, 最大のカテゴリーは, 希少種の1カテゴリー「地理的分布は広く, 生息地の特殊性が低く, 個体群密度が低い種」で, 全種の約5割を占めた.次いで大きかったカテゴリーは普通種のカテゴリー「地理的分布は広く, 生息地の特殊性が低く, 個体群密度が高い種」であった.各カテゴリーに含まれる種の生物学的特徴(分類群, 機能群, 体サイズ)に差は認められなかった.また種の豊富さが高い海岸ほど希少種数も全種に占める希少種の割合も共に高かった.
著者関連情報
© 2005 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top